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映画「カムイ外伝」

 

 9月20日、浦和ユナイテッドシネマで、映画「カムイ外伝」を観た。原作が連載されていたころからのファンとしては、映画化されると聞いてから楽しみにしていた。そして結果は「かなりいいできでは」と感じた。

「カムイ外伝」は白土三平・原作の漫画&劇画だが、普通漫画を俳優が出る映画にすると、ちゃちくなったり、原作とイメージが違ってしまうので、かなりガッカリさせられてしまうことが多い。それが今回はかなり戦略的に尚且つ真摯に原作に向かい合っている。それは一にも二にも監督・脚本の崔洋一のなせるところである。団塊世代で「カムイ伝」「カムイ外伝」とは同時代的に生きてきた骨のある監督である。原作に負けない仕掛けをしてきた。

白土三平の忍者漫画を読んだことがある方は分かると思うが、忍者の技の鋭さ・面白さをベースに、忍者社会や封建時代の厳しさ、残酷さを画面いっぱいに展開させるものだ。漫画から劇画に変わるにつれ、忍者同志のその激烈な死闘は、画面から溢れ出て、血肉の臭いを感じさせ、大自然の厳しさをも含むそのドラマは、生半可な映画の表現を拒否するぐらいのスケールとリアリティーがあるのだ。そのスケールとリアリティーが今回の映画には確実にある。つまり、ちゃちくなく、こちらに迫ってくるのだ!

忍者が走る、飛ぶ、闘う、これらの生の表現にかなりの重点を置いてきたことが見て取れる。もちろん特撮は使うが、安易には使わず、俳優のきびしい訓練と表現に対するあくなき挑戦の気概がある。だから逆に特撮が非常にうまく活きている。子供のころ、「変移抜刀霞斬り」や「飯綱落とし」などの技に熱狂したものだ。それがリアルにちゃちくなく、原作の表現を見事に映画化している。

主人公のカムイ役の松山ケンイチを始め、それぞれの登場人物が原作を壊さず尚且つ登場人物を生き返らせるような配役だった。今回のストーリーは「スガルの島」が原作だが、海のシーンや島のシーンも実に上手にロケーションしたと思う。海の色も鮮やかな藍色にVFXで仕上げ、鮫との戦いも迫力があり、渡りの衆の船の登場のさせ方も臨場感が溢れて感動した。

観ているうちに本当にカムイが生きているようだった。ただそれが最後のシーンの残酷さへと繋がっていくのは悲しいし空しいが、やはりそれが「カムイ伝」の世界なのだ。忍びの掟から逃れることができないカムイ!しかし、前を向いて生き抜いていくカムイ!私達の普段の生活はこれほど激烈ではないが、己の性に対峙して生きていく様は悲しいが美しい。人間がこの本質を見定めて生きていく時、本当のやさしさ、人生の大切さを感じることができるのだろう。



       
       コミック版の「カムイ外伝」と映画パンフレット。