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ペテン・ザ・ペテン

 2月13日、新橋演舞場にて、鈴木聡・作、ラサール石井・演出の人情喜劇「ペテン・ザ・ペテン」を観てきました。毎年2月に新橋演舞場で、中村勘三郎・藤山直美・柄本明らが中心となってやってきたお芝居のシリーズで毎年楽しみにしていました。しかしながら今回は勘三郎さんが急病で出られなくなってしまい、替わりにラサール石井さんが演ることになったので、どうなるかなぁ〜と少し不安な気持ちででかけました。

 物語は戦後間もない昭和24年頃、東北のあるひなびた温泉街でのペテン師達の活躍を描いたものです。黒田屋という旅館のおかみ(渡辺えり)が手島(井之上隆志)という男に温泉が出る話を持ちかけられ騙されそうになるところを、柄本明とラサール石井と藤山直美が演じるペテン師達がある策略をもって逆にペテンにかけるというお話です。最後は観客までペテンにかけるというおちがあり、歌って踊ってのレビュー付きで、がんばって舞台を作ろうとしている姿勢は見えました。

 しかしながら印象としては、「大黒柱のない家」みたいな感じです。やはり勘三郎さんの抜けた穴は予想以上に大きかったです。勘三郎さんの存在は物語と舞台の両面で大黒柱だったのです。あの、人を引き込む人情深さを導き出す演技の質の高さは、こういう人情喜劇の骨格なのです。直美さんもいたのですが、やっぱり二人が絡んでこそ奥深さや味わいが出てくるわけで、柄本明もしかりです。ラサール石井さんもがんばっていたので拍手したいですが、やはり柱のない家は頼りない仮の家に見えてしまうので残念です。

 ところどころ、面白い場面はありました。柄本明の物語とは関係ないセリフや動き、ベンガル独特のとぼけた味や、直美ちゃんのすごいスピードで走り去る姿とか、秘密の話を隠れて聞いている直美ちゃんや柄本明の演技は見ものでした。ただ、直美ちゃんの場面で気になった場面がありました。直美ちゃんは共演する俳優さんの特徴をつかんで、物語とは関係なく共演者をいじってそれがいつもは笑いにつながるのですが、今回は共演者の顔をけなして笑いをとろうとしていて感じがあまり良くなかったです。いつもだったら気にならないはずですが、勘三郎さんの不在をカバーしようと、ちょっと頑張り過ぎたような気がします。

 今回はみんな勘三郎さんに心配をかけないように頑張っていたと思います。内容的には客としてみれば不満でしたが、それはラサール石井さんが実は一番よく分かっていらっしゃるのではないでしょうか。だからこそエールを送ります。来年、必ずや勘三郎さんを迎えて雪辱してほしいのです。あの生き生きとした3人(勘三郎・直美・柄本)のハチャメチャな面白さ、人情の嬉し・悲しさを存分に披露していただきたいものです。来年も観に行くから頑張って魅せてね!!