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「年忘れ喜劇特別公演」


 
 昨日、新橋演舞場にて、藤山直美・坂東薪車・主演の「年忘れ喜劇特別公演」を観てきました。演目は2本立てで、一つ目は「銀のかんざし」、二つ目は「殿様茶店の恋日和」でした。
ふたつとも松竹新喜劇が、故・藤山寛美とともに公演してきた歴史ある演目です。新進気鋭の坂東薪車さんと直美ちゃんがこの歴史ある物語をどのように演じるのか、また直美ちゃんの舞台も10カ月振りなので楽しみにして行ってまいりました。

 「ふ〜ん・・・」という感じでした。つまらないわけではないですが、心の底から楽しめた感じではなかったです。最初の「銀のかんざし」は、年下の若い男(坂東薪車)とその男に惚れ抜いた髪結いの女(直美ちゃん)の凄まじいまでの男女の情念を描いた作品ですが、直美ちゃんはいつもは我慢を重ねてひたむきに生きる女を演じることが多かったせいか、惚れた男に対する執念みたいな業を押し出し、ある意味「わがままな女」「嫌な女」の面が見える女を演じていました。少し面喰ってしまいました。だから最後離れそうになったふたりがいっしょになる場面でも、心から「良かったね!」と祝福できない気持ちになってしまいました。焼餅?でしょうか。でもそれも人間の一面ですからドラマとしては普遍性があるわけで、その性を演じた直美ちゃんは大したものだと思います。

 二つ目の「殿様茶店の恋日和」は、直美ちゃんが「茶店の娘」と「盗賊の棟梁の女」と「殿様の奥様」の3役を、坂東薪車は「盗賊の棟梁」と「殿様」の2役を演じる喜劇で結構楽しめました。特に駕籠かきのコンビ、小島秀哉さんと小島慶四朗さんのやり取りは絶妙でした。笑わせようとする演技と、観てるとつい笑ってしまう演技には大きな差があります。その辺は舞台の上といえども、セリフをセリフとして言うのではなく、本当に感じているように演じられるからでしょう。才能とベテランの味ということでしょうか。舞台は物語で楽しむというよりは、場面を魅せるという感じの舞台でした。ですから、盗賊である坂東薪車さんが御用されるシーンも、大立ち回りに15分以上かけて、様々なシーンを設けて、その場その場で見得を切るという見せ場を設けていました。それはそれで楽しめたのですが、松竹新喜劇の真骨頂である人情で笑わせ泣かせるシーンが少なかったのは残念でした。

 直美ちゃんの魅力が今一の舞台だったので少しさみしかったです。たぶん「大阪ぎらい物語」や「はなのお六」などでしたら人情たっぷりの泣き笑いが楽しめたのでしょうけど、伝統のある演目をやることにも意義があるのでしょう。今回演出の人も初めての人だったので多少勝手が違いました。良かったところは、俳優の演技をじっくり引き出す場面作りです。下手をすると間が空きすぎて舞台がしらけてしまう危険があるところで演出効果を使わず、あくまで俳優の演技にコダワッテいるところに好感が持てました。ただし、人情泣き笑いの部分で言うと、物足りない部分がかなりありました。ですから次回はぜひ、お腹をよじらせるようなお笑いと、ハンカチが手放せないお話を見せていただきたい、と思うのです。

                                             


新橋演舞場入り口前


プログラム販売所のおねえさん


場内にある宣伝用のモニター画面


外のポスター、ほしいな〜・・・!