香辛料(栄養スパイス=薬味)の重要性

 「痔になったら刺激物を控えなさい」というセリフを聞いたことのある人は多いと思います。もちろん「出血している時」に辛いものを摂ったらこれはよくありません。
 しかし、「痔」の原因である「鬱血」をしないようにするためには、血行を良くする香辛料は大切なのです。事実お隣の国「韓国」ではキムチをたくさん食べますが、「痔」の疾患は日本よりずっと少ないです。
 辛い味は漢方では気剤(気のめぐりをよくする)であり、臓腑・器官では肺・大腸・鼻・皮毛に関係します。これは体全身の新陳代謝を良くするためには、なくてはならないものである、ということです。
 香辛料は「刺激物」として悪者扱いされることが常識のようになっていますが、じつは「薬味」=栄養スパイスとしてずーっと長い間、人間の食に欠かせないものであり、なおかつ沢山の点で有用なものなのです。

 常識のウソの誤解をとくために、以下に「香辛料(栄養スパイス=薬味)」の「薬効」と「具体例および解説」を表記しましたのでご覧下さい。

香辛料の有用性は、「激辛」を勧めているわけではありません。その土地、年齢、季節、体質などを考慮してバランス良く摂ることが大切です。

1)お腹を温め胃腸の働きを良くする天然の胃腸薬である。

 消化に時間のかかる食べ物には欠かせないものである。油の多い食物。てんぷらに大根オロシ根しょうが。サンマと大根オロシ。蒲焼に山椒。トンカツ・冷やし中華に練りからし。肉類にコショウ等のスパイス。ハンバーグに塩コショウとからし等。
 水気の多いものは腹が冷え、噛まずに食べる物は胃に負担になる。
麺類(うどんに七味唐辛子とネギ。ざるそばにワサビ。ラーメンにねぎとコショウ)寿司にワサビ・ガリ。しゃぶしゃぶに紅葉卸し。冷奴にネギと生姜。お茶漬けは三つ葉とワサビ

2)全身を温めて血行を良くし、冷えから守る。暑い時は皮膚の発散を助けて環境変化から体を守る寒さ暑さから身を守る酒の好きな人を辛党という。

 トックリで温めた酒は「五勺の酒は百薬の長なり」のことわざのとおり、全身が温まり、血行がよくなり神経が安らぎ心身の疲れが癒える。寒さにあたった風邪はたまご酒やネギ湯(親指大の生姜と味噌と白葱根10cm細刻し湯を注いで服む)で温めて治した。凍傷にトウガラシ寒性の白菜、茄子、胡瓜は薬味で調理する。

 インド、タイ、ベトナムなどの暑い所では、発散放熱が重要であり、お国料理は自然対応の郷土料理で辛い。寒暖の差の激しい所にエスニック料理がある。日本人は激辛というが現地では、飲み物までが激辛である。世界各地に気候風土と、季節に合わせた食文化がある。グルメという呼び名で、日本の食生活が崩壊しかけており、その結果として健康が損なわれている。

3)発散が良くなりストレス解消効果がある。スポーツの爽快感と同じで、躁鬱気味の人は、香辛料の常用で軽快する。天然の神経安定剤である。

 気疲れ、気鬱などの神経症で気を病む人には、血が良く巡り、皮膚からの発散が良くなれば、「気」が滞ることはない。一部の地方ではミョウガの別名を「バカ」と呼ぶ。ゆっくりした性格が、あの香りで養われ、そのように見えたからである。穏健な人は、薬味の使い方が上手な人である。七味ワサビを「刺激物」と思い、毒と信じていた人が「蘭香」を常用して痔がおこらなくなり、鼻詰まりがいつの間にかよくなった。匂いと辛みの強い生葱を細かく刻んで枕もとにおき、徳川家光の不眠症とどもりを治した故事は、香辛料の神経安定効果の応用だった。

4)細菌の繁殖を防止して雑菌による腐敗、食中毒から守る食中毒の予防薬である。

 腐敗し易い生魚を食べるとき、握り寿司や刺身には、ワサビシソ大根ショウガ等がたっぷり添えられる。食中毒やジンマシンを防ぐ知恵である。欧米でも中国でも香辛料は食料の一部である。冷蔵庫のなかった時代の生鮮食品の輸送・保存の技術は乾燥・塩蔵と香辛料の利用であった。からしレンコン・明太子などの保存性とかご飯に梅干を入れ保存した等は、香辛料の応用である。

5)胃腸の働きを高め、便秘・下痢が治り、発汗して喉痛・咳・痰を解消する肺と大腸の為の食べる薬である。

 唐辛子を入れて漬けた白菜に、七味を振りかけて食べ、タクアンをお菜としたかつての日本人は、便秘や下痢の苦労はしなかった。辛味大根ネギの冬野菜を常食し、漬物も毎食欠かさなかった。
 若い娘さんから老人まで、生野菜・果物が良いと洗脳されて便秘で苦しんでいる。寒性の生野菜・果物の多食は、便秘の原因に一つなっている。香辛料不足では、大腸は動かない。辛好きは快便である。

6)高血圧、心臓病の予防や、冷え性が治り、行動が活動的になる成人病予防の重要な薬である。

 薬味は、抹消血管が良く通り血圧が下がる。楽に発散するので心臓の負担も軽くなる。新陳代謝が活発になり、過剰な体脂肪を燃焼させ肥満の改善に有効である。
 
血液循環が良くなる結果、頭脳活動をはじめ皮膚の艶も、四肢の動きも内臓の機能も活動的になる。五味と感温の調和を実践すれば、五臓(肝・心・脾・肺・腎)は守られる。

日本では、刺激物と呼んで胃腸病・皮膚病・痔・風邪・高血圧症のなどの人は、摂らないようにとの指示をする医師がいる。日本に住んでいる日本人の治療をするためには、食の原点から勉強をすべきである。漢方療法を行う上では、正しい食養を指導しなければ病客を救うことは難しい。刺激物と薬味では、全く違ってしまうのでよくよく理解して戴きたい。(文責者 落合富雄先生)

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