漢方専門 川上薬店
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中医学でよく使う基本的な用語

漢方薬局や漢方に関する記事などをネットで見ると、「気」「血(けつ)」「水」や「肝」「脾」「腎」などの単語を目にすることがあると思います。これらの言葉は通常の認識とは異なることがあるので、ここでは当店のHPやブログでもたびたび出てくる中医学用語についてご紹介していきます。

「気」「血(けつ)」「津液(しんえき)」「精」

気について

まず一番初めに大事なのが「気」です。目に見えないもので言い表すのが難しいですが、一般的にいうと「元気」という認識をしておいてもらって大丈夫です。「元気があれば何でもできる!」じゃないですが、元気がある人というと風邪を引きづらかったり、冷え症とは無縁だったり、一言でいうと「健康そのもの」な人です。

「気」には後述の「血」を①温める②動かす③変化させる④守る⑤固める という5つの働きがあります。簡単に紹介していきましょう。

温める(温煦) 文字通り温める力です

動かす(推動)

血を正常に動かす力です
変化させる(気化) 血に変化させる力です
守る(防御) 色々な「邪(じゃ)」から体を守る力です
固める(固摂)  体のいろんな部分を本来の場所にとどめておく、血を漏れないようにする力です 

血(けつ)について

次に血(けつ)ですが、これは一般的な認識の血液とイコールと考えていただいて大丈夫です。

血(けつ)が不足(血虚)すれば貧血によるめまいなどの症状が出てきますし、他にも様々な症状が出てきます。

ちなみに、食べたものを血に変化させるときに「気」の「気化」作用が働いています。

つまり気が足りなければ気化作用が弱まり、十分な血を生み出すことができない、ということになってしまいます。

このようなことから「気」と「血」は密接に関係しています。

津液(しんえき)について

津液というのは、一言でいうと「体液」のことです。

体の中の必要な水分のことで、血以外の液体と考えます。

「気」や「血」と同様に人が生きていくうえで欠かせないものとなります。(細かく分類すると「津」と「液」にも分かれるのですがここでは一緒にしておきます)

そして「津液」は後述の「脾」の運化によって作られます。

精について

精とは人間の生命活動の基となるエネルギーのような物質です。「元気の基」と考えていただくとわかりやすいかもしれません。

人体の成長発育・各機能活動の基礎であって、中国の古書には「精は、生命の根本だ」とあります。

この「精」には先天の精と後天の精の二つがあり、先天の精は両親から受け継いだ精気で、後天の精は生まれた後飲食物を通して作られる精気のことで、後天の精は先天の精がどれだけあるかに依存します。

つまり、両親から受け継いだ精が多いほど、生まれた後もすくすくと育つことができます。

「肝」「心」「脾」「肺」「腎」

五行図
五行図

左のような図を見たことはありませんか?

この図は漢方ではとても大切な考えの「五行図」というものです。

「肝・心・脾・肺・腎」のそれぞれに対応する臓腑があって、これらは密接な関係を持っています。ここでは「肝・心・脾・肺・腎」について簡単にご紹介いたします。


「肝」とは

中医学で「肝」というのは腹部に位置し、横隔膜の下、右わきにあります。そして、この「肝」と関連しているのが「目」と「筋」と「爪」です。また、肝の機能として①疏泄を主る(つかさどる)②血を蔵すということがあります。①の疏泄を主るというのは、全身の「気」を調節して「血」と「津液」をスムーズに運行させる意味です。②の血を蔵すというのはその名の通り肝に血を貯めます。「肝」に一定量の「血」が無いと①の疏泄がうまくいかず、目が疲れたり筋肉がひきつったり爪の状態が悪くなったりします。

「心」とは

「心」は胸腔にあって、西洋医学での心臓と同じ臓器を指すとともに、精神活動を統括します。中国の古書には「心は五臓六腑の大主なり、精神の舎する所なり」とあります。

「心」には①血脈を主る②神志を主るという二つの働きがあります。

この①血脈を主る機能は、主に心の血液の運行を推進する働きを指し、次いで心が血液の生成に関係していることを指しています。①の働きがしっかりしていないと、動悸がしたり、脈が速くなったりなどの症状が現れてしまいます。

②の神志を主る機能の「神」というのは精神活動の総称で、思惟・意識それに情志活動などを包括した概念です。人の精神活動は大脳の働きの一つですが、中医学ではそれを心に帰属させます。ですので、不眠症や夢を多く見るなどの、脳に関係があるような症状の場合でも、中医学では心に問題があると考え、治療していきます。

「脾」とは

「脾」は横隔膜の下にあり、生体の生命活動の維持及び気血津液の生化は「脾胃」で行われるため「後天の本」とも呼ばれます。「脾」は口や口唇と関係しており、脾に問題があると何かしらの変化が現れます。「脾」の生理機能として①運化②昇清③統血があります。

①の運化とは、消化・吸収・運搬・代謝のことです。飲食物を消化して必要な物質を吸収して、それを全身に運搬して不要なものは代謝する。これが「脾」の正常な働きです。ここに異常が起きてしまうと、腹部の膨満感や食欲不振・体の様々な水腫や気血津液不足になってしまいます。②昇清とは栄養物質を吸収した後、心・肺・頭目に送り、心肺の機能で気血を生化して全身を栄養することを指します。この昇清機能が異常をきたすと、慢性下痢や脱肛・内臓下垂などを引き起こします。

③統血の統はコントロールすることの意味で、血液を脈中に循行させ、外にこぼれさせないような機能を指します。これがうまくいかないと、習慣的な血便・血尿・漏崩などを引き起こしてしまいます。

「肺」とは

「肺」は胸中に位置して左右それぞれ一つずつあります。肺は寒さにも暑さにも弱く、外邪にも侵入されやすいので、「嬌臓(きょうぞう)(弱い臓器)」と言われます。肺は①気を主り、呼吸を司る②宣発と粛降を司る③水道を通調する④百脈を朝し、治節を主る機能があります。1つずづ説明していきますと、①気を主り、呼吸を司るとあります。全身の「気」と呼吸の「気」の二つの気を司っており、気を生成するとともに呼吸によって取り入れた「清気」と体内の「濁気」(汚れた気)を交換する役目があります。②宣発と粛降を司るというのは、宣発によって全身・体外に発散し、粛降によって膀胱に送り呼吸道をきれいにする作用を持っています。③水道を通調するというのは、体内の水液の分布・運行・排泄の通り道を管理し、調節する働きを指します。④百脈を朝し、治節を主るですが、朝とは集中の意味でつかわれます。なので、全身の血液が経脈を通して肺に集まり、肺の呼吸によって気体交換を行ってから全身に分布することを指し、治節とは治理と調節の意味があり、肺の主な生理機能を高度に概括したものです。

「腎」とは

「腎」は腰部に位置し、脊柱の両側に左右1つずつあるため、中国の古書では「腰は、腎の腑である」と言っています。また、腎は精を蔵するため生命の源とされ、「先天の本」とも言われています。腎は①精を蔵し、成長発育生殖及び水液代謝を司る②骨を司り、髄を生じ、その華は髪にあると言われます。①腎は精を蔵し、成長・発育生殖及び水液代謝を司るというのは、成長・発育・生殖というのはすべて精気が関わっていて、生まれた後すくすくと成長するためには精気が必要なため、司ると言われています。水液代謝を司るというのは、腎の働きにより、津液の輸布を調節し、排泄を正しくすることによって、体内の水液の正常な代謝を維持する機能を指します。②骨を司り、髄を生じ、その華は髪にあるというのは、①で述べたように精を蔵しているため、骨の成長・発育・修復は腎の精気に頼っているということがあります。小児の大泉門遅閉や骨軟無力、老人の骨がもろくなり折れやすくなるといったことも腎の精気不足に由来します。他にも脳や歯、髪の毛などは皆腎の精気により成長発育、維持されています。

「陰」と「陽」

陰陽太極図
陰陽太極図

皆さん、このような図を見たことはありますか?

陰陽師などで知られる「陰陽太極図」というものです。

白い部分が「陽」で黒い部分が「陰」となります。

この太極図の考え方はまた別の機会にお話しいたしますが、ここでは昔からある陰陽学説での「陰」と「陽」について触れていきます。

「陰」というのは暗い、「陽」というのは明るいことを指します。

よく「陰気な人」「陽気な人」と言いますが、あのイメージをほぼそのまま自然界や人体などの様々なことに当てはめて陰と陽に分類したのが陰陽学説です。


陰陽学説における「陰」と「陽」

自然界のあらゆる事物と現象は相互に対立していて、陰陽の二つの側面を有すると考えているというのが陰陽学説です。一番わかりやすいのは春夏秋冬です。気温が上がってくる春夏は「陽」、逆に気温が下がってくる秋冬は「陰」となります。

代表的な陰と陽の属性をご紹介いたします。

分類 空間 時間 季節 性別 温度 重量 明るさ 事物の運動状態

春・夏 上昇・外向・明らかな運動
秋・冬 下降・内向・相対的な静止 

このように陰と陽は対極にあり、陰が無ければ陽は存在せず、陽が無ければ陰も存在しないということになります。

自然界における陰と陽は大まかにこのような感じで分けられます。

 

では次は人体における陰と陽についてみてみましょう。

分類 人体の部位      組織構造 機能活動状態
体表・胸・背・四肢・上半身 皮毛・六腑・気・衛・陽経 興奮・亢進
陰  体内・腹・胸・体幹・下半身 筋骨・五臓・血・営・陰経 抑制・低下 

このように分かれます。

また、単純に陰を「血」、陽を「気」と捉えても半分くらいは正解です。

「実」と「虚」

長くなりましたがこれで最後にしておきます。

 

実際に病気になってしまった時に、中医学では原因を探ります。

その判断をする上で「実」か「虚」かを見極めることが極めて重要になります。

「実」というのは、思い当たる節がある場合(例えば火傷をした、打撲をした、飲み過ぎた、冷房にやられた、アイスを食べ過ぎた等々)のことを指します。

「虚」というのは、何故かはわからないけれども症状が出始めた場合(微熱が続く、下痢と便秘を繰り返す、貧血でふらつく、手足が火照る、手足が冷える、お腹が冷える等々)のことを指します。

 

また、この「虚」と「実」には症状の出方に違いがあり、「虚」の場合には多くの場合症状がじんわりと出てきます。

それに対し「実」の場合には、症状が急激に出て「虚」に比べて重い・激しい傾向があります。

もちろん「虚」であっても症状が重い場合や「実」であっても症状が軽い場合がありますので、それは問診等にて判断します。

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